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ジョーカー

”この映画は心に傷を残す”

暗く、悲しいホアキン・フェニックス版『ジョーカー』

2019年10月4日日米同時公開。バットマンの宿敵で、アメコミ史上最も有名なヴィラン、『ジョーカー』。悪のカリスマは、なぜ生まれたのか? 今年のDC映画は、『アクアマン』、『シャザム!』ときて、今作『ジョーカー』で2019年最後になります。前者2作品は、明るく楽しいコメディ要素が強い映画でしたが、一転、『ジョーカー』は暗く、陰鬱で観ていて苦しくなる映画です。監督のトッド・フィリップスは、『ハングオーバー』シリーズでよく知られるコメディの人といった印象が強いです。 今作のようなシリアスな映画を撮ったのがとても意外でした。

主役ジョーカーを演じるホアキン・フェニックスは、『グラディエーター』、『ザ・マスター』、『ウォーク・ザ・ライン』 などに出演していて、メジャーな作品から少しマイナーな作品まで幅広く活躍しています。ジョーカーを演じるにあたり、3ヶ月で20kg以上の減量をして、ジャック・ニコルソンや、 ヒース・レジャー(ダークナイトの感想はこちら)、ジャレッド・レトが演じた難役を、今作はホアキン・フェニックスの為の映画といっていいほど見事に演じています。

アーサーの背中は哀しく、切ない、

ジョーカーといえば、昔はコメディ要素が強いキャラクターでしたが、ノーラン版バットマンの『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーは、とてもシリアスで魅力的でバットマンを凌ぐ存在感でした。(ダークナイトのジョーカーの記事はこちら) 今回のジョーカーは、コメディでもなくシリアスだけど、ヒース・レジャー版とは違い悪魔的でカリスマ性があるジョーカーではなく、貧しくて孤独な男です。 母の介護をしながら、ピエロ派遣の会社でピエロとして働く後のジョーカー・アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)。

彼には、持病があって感情が高ぶると自分の意志とは関係なく笑ってしまう病で、その病も相まって社会になじめていません。アーサーは母からずっと、人々を笑顔に、ハッピーにしなさい。と言われていて、そのことからコメディアンを目指しています。 彼の夢は、有名なコメディショー司会者のマレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の番組に出ること。彼は夜な夜な1人でスタンダップコメディーのネタを書きためる日々。

職場で裸で靴を修理する場面があって、背中からアーサーを撮ったシーンがあるんですが、やせ細った背中がとても悲しく切ない孤独なアーサーの生活が垣間見えるシーンです。 アーサーが街を歩いたり、住んでるアパートへ向かう階段を登るシーンで、アーサーの歩く姿を後ろから撮ったショットが多々登場しますが背中が丸まってて歩き方で仕事もプライベートも、上手くいっていない印象を受けました。

アーサーは、銃を持つ(あらすじ1)

アーサーが、後のジョーカーとしての狂気が姿を現すのは、ピエロの仕事中に不良に襲われて護身用にと銃を同僚から受け取った後から。 最初は、銃を恐れている優しい男のアーサーですが、1人機嫌よくダンスを踊っている時ふいに銃を壁に撃ってしまいます。びっくりしてその場を取りつくろうアーサーですが、 その時から仕事中にも銃を忍ばせるようになります。先日の不良に襲われた件でも責任を負わされ怒りに満ちるアーサー。更に、仕事先の病院で忍ばせていた銃を落としてしまい、 好きだったピエロの仕事まで失いました。そして、アーサーの人生を一変させる出来事が____。

電車で3人組のサラリーマンに絡まれたアーサーは持っていた銃で、3人を射殺します。 すぐに逃げるアーサーですが、虐げらていた人生で初めて自分の思い通りに人を屈服させた。たとえそれが殺人であっても。恐怖に震えながらアーサーは、 駅のトイレで踊ります。人を殺めながら満足気なアーサー。その後のジョーカーに変貌する素晴らしいシーンでした。

ジョーカー名場面

1番好きなシーン。地下鉄を脱出したジョーカー

格差、差別、暴力。アーサーがジョーカーへ変貌する(あらすじ2)

3人を殺害したアーサー。その3人はウェイン産業のエリート証券マンで、ゴッサム・シティの名士トーマス・ウェインの会社で働く人たちでした。 後のバットマンであるブルース・ウェインの父です。トーマスは、市議会議員でもありゴッサム・シティの頂点です。広がり続ける格差の象徴であり、貧困層の敵です。 アーサーが起こした事件が、エリートへのカウンターアタックとしてゴッサムの市民の共感を呼びます。ピエロの仮装が、増え続ける負担へのデモの象徴となります。

一方、アーサーは母が昔働いていたウェイン家へ毎日のように出していた手紙を盗み見ます。そこには、トーマスがアーサーの本当の父であることが書かれています。 確かめようとウェイン家へ向かうアーサー。屋敷のところで小さな子供に会います。それがブルース・ウェイン。後のバットマンとジョーカーの人生がはじめて交差します。 アーサーは、近くにいた執事のアルフレッドから邪険にされた挙げ句、お前の母は妄想でトーマスが父だといっているといわれ追い出されます。その後、トーマスに直接会うためホテルに侵入しトーマスへ会いますが、母と自分を罵倒され、殴られてしまいます。どちらが嘘をついている?

アーサーとマレー、対峙する2人(あらすじ3)

アーサーは、昔母が入院していた病院の医療記録を奪い、記録を読むと___。 嘘をついている(正確には、病気の妄想)のは、母のペニー・フレックでした。更には、母と当時の母の彼氏からアーサーが苛烈は虐待を受けていたことまで記録されていました。 この世界でたった1人の味方だと思っていた母からの裏切り。切れたアーサーは、ペニーを殺害します。もうこの世界に、自分は何もない、何もない、何もない。

憔悴するアーサーの自宅に1本の電話。憧れているマレー・フランクリンショーへの出演オファーの電話でした。以前、スタンダップコメディバーで披露した映像をマレー・フランクリンが茶化したところその映像が視聴者の間で話題になり、番組への生出演をオファーしてきました。アーサーも出演すれば、またマレー・フランクリンに馬鹿にされることを知っているにも関わらずアーサーは、出演を快諾します。アーサーには、ある目的があったのです。 当日、完全にジョーカーに変貌したアーサーとテレビでアーサーをまたイジって笑かそうとするマレー。 しかし、マレーは知りませんでした。アーサーが既に証券マン3人と母、そして、銃を渡したピエロ仲間を殺害していることを____。
ここからクライマックスのマレーフランクリンショーのはじまりです。

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