”国家主導のドーピング。オリンピックの闇”
ドーピングの効果を調べてみた
2017年8月4日Netflixで公開。監督はブライアン・フォーゲル。Netflix制作初のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。 アマチュアの自転車選手である監督がドーピングを実際に行い、競技成績にどの程度影響があるのか? 検査をすり抜けることができるのか?を検証する内容の予定でカメラを回し始める。
ドーピングの専門家は、アンチドーピングの専門家に聞け!とばかりに、ロシア反ドーピング機関所長のグリゴリー・ロドチェンコフとコンタクトとり、ドーピングをフォーゲルは始めるが、、、、、、
急展開すぎる怒涛の後半
最初は、スーパーサイズ・ミーのような監督が実験体になってドーピングの実態と効果を検証しようとする映画だったはずが、ドーピングの専門家のロドチェンコフと知り合い協力関係を築いた矢先、ドイツのテレビ局のスクープによって事態は急転します。ロシアが国家ぐるみで選手のドーピングの証拠を隠していたのです。
ロシアの検査責任者だったロドチェンコフは辞任、責任を追求され命の危険を感じたロドチェンコフは、監督フォーゲルの力を借りてアメリカに亡命を図ります。 身内の実験映画で牧歌的な雰囲気だった前半から、後半は一気にサスペンス映画のような恐怖の展開が待っていて、ドキュメンタリーの持つ事実の力の凄さをこの映画は示しています。
政治とオリンピック
ロシアの地元で開催されたソチ五輪で一つでも多くのメダルを確保する。ロシアの国家的ドーピングプロジェクトはスタートしました。なんでスポーツの為に国が動くのか? こういった疑問にも『イカロス』は仮説を唱えています。大統領プーチンの支持率は、ソチ五輪の成功で急激に上昇しウクライナに軍を派遣しました、今も続くクリミア紛争です。
支持率が低いままだったら、もしかしたら派遣を少し考えたかも知れません。支持率やインフラ整備、世界各国へのアピールとたかがスポーツと言ってはいられないほど、今のオリンピック は力を持っています。
ロドチェンコフを救え
後半、ロドチェンコフはフォーゲルと協力して、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)にロシアのドーピングを告発。リオ五輪の大スキャンダルの裏側でおこなわれた生々しいやりとり が映像に収められています。実際に、現在でもロドチェンコフは命の危険があって、家族に会うこともできません。それを承知で告発したロドチェンコフの勇気が報われてほしいですが、 現実の厳しさとやるせなさもこの映画は描いています。
ロシアと国家を敵に回すと恐ろしい。しかし、『イカロス』が注目を浴びれば、浴びるほどロドチェンコフに手を出しづらい状況になるとも思うので、この映画が注目た意味は大きいと思います。