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アトランタシーズン1

変幻自在の男ドナルド・グローヴァーの変幻自在な日常系不条理ドラマ

ドナルド・グローヴァー=チャイルディッシュ・ガンビーノ

『オデッセイ』、『スパイダーマン:ホームカミング』、『ハン・ソロ』とここ数年、大作に出演。更に2018年アーティスト・チャイルディッシュ・ガンビーノとして『This Is America』が大注目されて、 2018年ドナルド・グローヴァー大活躍の年となりました。そんなドナルド・グローヴァーが制作総指揮と主演をつとめた2016年放送の『アトランタ』がNetflixに追加されていました。

アトランタのちょっと悪い日常

ドラマの舞台は、アトランタ。近年ヒップホップの街として有名で『アトランタ』にも大活躍中のミーゴスも出演しています。主演のドナルド・グローヴァー演じるアーンは、 恋人のヴァンと子供もいるが、関係は微妙。仕事も長続きせず、養育費も払えない。ある日、たまたま見たMVにでてるラッパー・ペーパーボーイがいとこのアルフレッドと気づいたアーンは、 マネージャーとして奮闘。音楽業界で成り上がりメイクマネー!といった成功物語ではありません。ユルーい日常系で、アトランタで生活するアーンとヴァン、ペーパーボーイの生活を淡々と描いてます。 ただ、その日常のシーンに人種の違い、ラッパーのイメージ、銃がある恐怖といったアメリカの抱える問題をおりこんでいます。

監督は日本人。アメリカではマイノリティ。だからこそ大ヒット

『This Is America』でも監督をした日本人のヒロ・ムライが『アトランタ』でも監督をつとめています。ヒロ・ムライ、ドナルド・グローヴァーが共に、アメリカではマイノリティで マイノリティならではの違和感。『This Is America』では、実際の事件のパロディを。『アトランタ』では、淡々とした日常に潜む違和感を描いています。

好きなエピソード

アトランタシーズン1は、全10話。アーンたちの関係性のつながりはありますが、1話完結型で話のつながりはあまりありません。10話の中で好きなエピソードが、アーンがデートの支払いをできず、ペーパーボーイに電話しますが、ペーパーボーイは音楽活動の足しにしようと麻薬取引をしている最中で、ヤバイ奴らと取引でモメて大ピンチ。ただ、その電話がつながることで双方がうまくいってアーンもペーパーボーイも助かる話。

チャリティ活動に参加したペーパーボーイが、大人気だが素行が悪いJ・ビーバー(本人ではない)とモメて殴り合いの喧嘩に発展。アイドルであるJ・ビーバーは会見して 反省。一方、チャリティの取材にきていた女性記者をナンパしていたペーパーボーイ。だけど、軽くあしらわれた上に、「ラッパーが求められているのは、クズであることよ。」と言われた上に 記者はJ・ビーバーに夢中でバツが悪いペーパーボーイの話。

このエピソードの中の途中のセリフなどに、白人と黒人のイメージの微妙な違和が感じられます。 その違和感が爆発するのが、7話の「人種転換」です。7話は、モンタギューという討論番組にゲスト出演したペーパーボーイ(なにげに売れてきてる)。テーマは人種・セクシャリティ。番組の間のCMまで作ってあって1話まるまるモンタギューの放送という形のエピソードです。白人の社会学者と司会者とペーパーボーイ。社会学者は、ヒップホップの歌詞やラッパーの姿勢について批判。それに反論するペーパーボーイ。

当事者そっちのけで語る社会学者への皮肉かな?と途中観ていたんですが、自分のことを白人だと言い張る黒人少年がでてきて、その少年のストレートで金髪にしたヘアーをみたペーパーボーイ は大爆笑。つまり、黒人であるペーパーボーイも黒人とはこうであれ!白人のマネごとをするのはいけない!変だ!と騒いでるシーンをみると、お互いの文化を許容するのは難しいだなと分かるシーンでした。

ホワイトウォッシュと文化の盗用

ハリウッド映画でも、原作は、アジア人だったりマイノリティの人種であるのに実写化したら、演じる俳優はすべて白人だったとか、白人が黒人文化のヒップホップや ファッションを真似ると文化の盗用だと問題になり炎上するケースがあるそうです。歴史的に、命を賭して作り上げた自分たち黒人文化を白人が商品化して利益を上げた事実があって その事実に対する抗議の声があがる。真似した本人は、ファッションだったり髪型や音楽を好きでやっていたとしても、自分たちの文化を盗用するなとなってしまい、異文化間の交流はとても難しいことがわかります。国同士の物理的な距離も近くなり、インターネットの登場で他の文化を知るハードルは下がっても、お互いの文化を尊重して理解するのは、多様性の時代とはいえ、難しく現代の課題ではないでしょうか?

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