”目には目を!歯に歯を!”
至近距離で捉えたメキシコ麻薬戦争の真実。
2016年5月公開のドキュメンタリー映画『カルテル・ランド』です。監督・製作・撮影・編集マシュー・ハイネケン、 製作総指揮はキャスリン・ビグローです。2009年のハート・ロッカーや2012年のゼロ・ダーク・サーティなど硬派な映画を撮ってるイメージです。 好きな監督の1人です。マシューハイネケン監督は、スペイン語が話せないにも関わらず、メキシコに乗り込み地元住民と交流を深めて、撮影したそうです。 舞台は、メキシコのミチョアカン州とアメリカのアリゾナ州の町。メキシコ側の主人公は、麻薬カルテルのテンプル騎士団に支配されてるミチョアカン州の町で、暴力と腐敗に 反抗しようとする医師ドクター・ホセ・ミレレス。警察も政府も信用できないと自警団を立ち上げて、テンプル騎士団に自分たちで対抗します。
アリゾナの自警団
一方、アリゾナ州の町では、アメリカの退役軍人のティム・“ネイラー”・フォーリーがアメリカ側の主人公です。 フォーリーも、武装して自警団を結成して仲間と不法移民と麻薬の流入を、防いでいます。一般市民ながら、すごい武器も持ってるし、麻薬組織の手下を 捕らえるし、勝手にやってもいいんでしょうかね?私人逮捕みたいなやつでしょうか?しかし、市民からは賛否両論あるようです。 この2人を軸に、話は進んでいきます。
カリスマ医師ミレレスのメキシコ自警団
ミチョアカンの医師ミレレスは、カリスマ的な演説の上手さと医師として住民から慕われているようで、あっという間に自警団は大きくなります。 大きくなった自警団は、自ら捜査もしてカルテルのメンバーを捕まえていきます。自警団のメンバーには、テンプル騎士団に家族を殺された者もたくさんいて、 捕らえたカルテルのメンバーに暴力を振るうものもいます。復讐の連鎖ですね。テンプル騎士団に奪われた領土を段々取り戻していきますが、疑問も、、、、
メキシコの不法移民を取り締まる男
アメリカには、めちゃめちゃ麻薬がメキシコから入ってきてます。アメリカの麻薬の消費量が半端ないからメキシコのカルテルも半端ない資金と武器を持ってる んすね、、。不法移民と麻薬の流入を防ぐことは完全には不可能っぽいです。この現状に危機感を持つ男がアメリカ側の主人公フォーリーです。 フォーリーもミララスと同様に仲間たちと自警団をつくり、不法移民を捕まえています。捕まえる権利はないんですけど、装備がめちゃめちゃ立派ですごい銃を持ってるあたり、「さすがアメリカや!!スケールでけぇやぁぁ!」と思わず忍空の氷刹みたいに叫ばずにはいられません。
トランプ大統領も移民対策と称して当選してすぐは、「メキシコ側の国境に壁を作る!金はメキシコが出せや!!」と息巻いておりました。 移民をナイトスコープで見て、捕まえに行くシーンなんかは『ボーダーライン』にもありましたね。『ボーダーライン』は、だいぶカルテルランド風味 で面白かったです。
変わってゆく自警団と腹心の正体
メキシコ側では、自警団が力を付けます。軍に武装解除を要請されるも追い返しメンバーも増え文字通り町を支配します。ユニフォームと銃を携帯し、カルテルの手先とみれば、拉致、拷問、、、。それは、もうカルテルと変わらねーって事で、、。ミレレスの思惑を超えて巨大化していく自警団。ミレレスも、何とか元の自警団に戻そうとしますが、時すでに遅し。飛行機事故でミレレスが組織を離れている間に腹心のパパマヌーフ達に自警団を乗っ取られます。もう漫画みたいな展開、、。最初は、人の良さそうなお父さん風情だったパパマヌーフだったのに、とんだタヌキおやじだー。 立場が人を変えるのか、、。とにかく、自警団は軍に認められ、地方防衛軍として再出発します。
組み込まれたシステムの中で
地方防衛軍と言っても腐敗しまくっていて、テンプル騎士団や腐敗した警察と何ら変わらないカルテルになってしまいました。 ミイラ取りがミイラになり、新しいカルテルが誕生しただけでした。 恐らく、この町でだけ起きている訳ではなくて、メキシコ中で起こってることなんでしょうね。 カルテルを倒してもまた新たなカルテルが生まれるだけ、、。単純にカルテルを倒すだけでは何も解決しない。 メキシコと麻薬は、がっちりと組まれた錬金システムで、その中にアメリカや諸外国も入っていて、複雑怪奇な恐ろしい世界です。
クレイジージャーニーの件
この映画を見る前に、初期のクレイジージャーニーを観ていて、出演者の丸山ゴンザレスさんがメキシコ麻薬戦争の取材で、ミチョアカン州の同じ町に行ってました。 住人にインタビューしてるシーンで「自警団についてどう思うか?」との問に、険しい顔で「答えたくない。」おやっと思い、 その後、「ではカルテルについてどう思うか?」との問に「どっちの?」と答えています。わー恐ろしや、、恐ろしや、、、。 住人にとって、自警団もカルテルもどっちも変わらないってことですね___。
オープニングの持つとても重要な意味
この映画の最初のシーンは、おっきなドラム缶で麻薬を煮詰め精製するシーンからはじまるんです。 てっきりテンプル騎士団カルテルのメンバーが精製してるかと思いきや_____。 エンディングまで観て、単純な正義と悪の構図ではないことが分かります。エンディングとオープニングが最後につながる演出 大好きです。それがドキュメンタリーでやれてることに、えんしゅつのじょうずさをかんじます(語彙力...)