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ディナーラッシュ

”金融サスペンスと金融ドキュメンタリーの映画2本立て”

振り返る世界同時不況の原因

2007年に起きた世界同時金融危機を覚えているでしょうか? 2006年のアメリカ発のサブプライムローン問題を発端にリーマンブラザーズが破綻し、世界中に金融不安が起きました。 後に制作された『マージンコール』と『インサイドジョブ』の2つの映画を通して当時何が起きていたのか書いていきたいと思います。

インサイドジョブ=内部犯行の意味

まず、『インサイドジョブ』というドキュメンタリー映画について。インサイドジョブは、内部犯行という意味だそうです。 この映画は金融の歴史をひも解き、規制緩和の末に金融危機を起こすまでを丹念に追っていきます。1970年代まで、金融業界は厳格な規制が行われいてトレーダー達はバイトもしなければ生活出来ないような仕事でした。

しかし、80年代にレーガノミクスと言われる規制緩和が行われ莫大なマネーが金融業界にもたらされました。この陰には、圧倒的なロビー活動のや金融・証券会社出身者の財務長官への就任があったと語られます。つまり、政治の中枢に金融会社の偉いさんが入り、自分たちの業界の規制を緩め自由に投資をしたいという誘導が行われていたんです。その結果、後に起こるリーマンショックの引き金を引くことになります。

はじまりはサブプライムローン

この金融危機の発端は、サブプライムローンです。サブプライムローンとは、通常の住宅ローンの審査には通らないような信用度の低い人向けのローンです。アメリカでは最初数年かは支払を金利に留めるなど、当初の返済負担を軽減したものが普及していて自分の返済能力を超えた借入を行うことが可能となり、そのような貸付が増加していました。そのような背景もあり、信用度の低い人達も住宅を購入することが出来ました。しかし、何年か後には利率も高くなり多額の金額を支払うことになります。

それでも、ここまで拡大した理由は上昇し続ける住宅価格があったからです。住宅価格が上がり続ければ、担保どころか転売してローンを返済した上に差額の利益を得ることも可能となります。この結果、住宅ローンを組めない人にまでローンを組む人が増えてブームはさらに加熱しました。しかし、住宅価格が下がればこの方法はすぐに焦げ付きます。

ローンの証券化と世界にばらまかれたリスク

この債券を証券会社が利用します。サブプライムローンの債券を証券会社が買い取り証券し、金融工学を利用して破綻する危険のある債券と他の証券を混ぜてリスクを分からなくしてから世界中に売り出しました。この証券には、格付け会社のお墨付きもあり世界中の会社が投資しました。結果、サブプライムローンの破綻と共に金融危機が世界中で起きたということです。ここで、『インサイドジョブ』に戻ります。映画の後半では現オバマ政権でもこの内部犯行は止められないと語ります。その理由は、今の政権にも財務の要職を占めているのは金融業界と結びつきが強い人物だからです。

『マージンコール』(あらすじ)

まさに金融崩壊の当日を描いた作品が『マージンコール』です。フィクションですが、リーマンブラザーズや巨大投資銀行をモデルに崩壊に向かう一日をサスペンスフルに描いています。物語は、会社のリストラシーンから始まります。リストラは日常茶飯事のようで、生き残った社員達は安堵しますがリストラされた社員の一人があるリスクを部下(ピーター)に伝えます。それは、サブプライム関連の証券バブルが一気にはじけ、この証券を早急に売らないと会社が破綻するほどのものでした。

金融危機が起きた瞬間の証券会社の一日

ピーターは、このデータが正しいと証明してその日のうちに緊急の役員会が開かれます。そこで決まった事は、この証券を速やかに処分する事でした。要するに、間違いなく下がる事が分かっている証券を顧客達には伝えずに売り抜けるというほとんど詐欺の手口でした。当然、この決定に異議を唱える社員もいます。主人公のピーターの上司のサムです。サムは昔気質の証券マンでそんな事をすれば顧客の信頼を失いそのうち破綻すると重役に提言しますが、決定された事項は変わりません。この決定に一度は辞表を出しますが、社長の説得により結局会社に残り部下達に売り抜ける事を指示します。

なんとか、次の日中に目標を達成し社長にねぎらいの言葉をもらい、出世する事になりました。同じくリスクを証明したピーターも出世していました。サムは、自分の意見を貫けなかった事と目の前のボーナスや生活の事を天秤にかけ、後者を選んだ事を自己正当化しようとしますが割り切れない複雑な心境を覗かせたシーンで映画は終了します。一見すれば、とても地味な映画だと思いますが、映画の背景を知って現実に起きている出来事と照らし合わせて観るととても楽しめると思います。出演者も、ケビンスペイシー、ポールベタニー、ジェレミーアイアンズ、デミムーアと演技派が集結してるのでその演技合戦も見物です。

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