”観るもの全てが恋に落ちる、極上のミュージカル・エンターテイメント”
『セッション』だけの監督ではない。すごい男だデミアン・チャゼル
2017年2月24日日本公開のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。監督は、『セッション』で飛躍したデミアン・チャゼル監督。主演にライアン・ゴズリングとエマ・ストーンで、ロサンゼルスを舞台に 女優の卵のミア(エマ・ストーン)と、売れないジャズピアニストで自分のジャズバーを開く事が夢のセブ(ライアン・ゴズリング)の2人の物語。 春に出会い、夏に進展し、秋に変化して、秋から5年後の冬に物語が終わる。この5年後の冬の7分とちょっとのシーンの為に、丁寧に2人の関係性を描いています。
何よりも曲が良い!『アナザー・デイ・オブ・サン』
最初の高速道路のイライラしている渋滞シーンから突然、歌い踊りだす『アナザー・デイ・オブ・サン』から もうテンション上がりまくりです。『タッパッパパパラパッパ』と流れた時点で、もうサントラ買います!!と思いましたね。そしてサントラ買っちゃいましたね。 ミュージカル映画だと知って、観に行ったんですが、もう最初からインパクトあって、高速道路の車の上で大勢の出演者が 歌い、踊るんです。6分ぐらいのシーンでワンカットでビタッと決まってました。この時点でもう大拍手!! チャゼル監督いわく、「最初のシーンで、この映画はミュージカル映画なんだという心構えを観客にしてもらいたかった」そうです。
最初から心を掴まれたシーンの連続。楽しい楽しいミュージカル映画
個人的にミュージカルって避けてたジャンルだったんです。急に、「会話から歌い出すとか踊りだすとかよく分かんねー」って勝手に思ってて、、。 でも、今回セッションが面白かったし、観てみようと思って大正解でした。今回すんなりハマれたのは、とにかく踊りが圧巻で曲も最高に良かったから。 ミアと同居してる友人たちの『サムワン・イン・ザ・クラウド』も、赤、青、黄色、緑の原色ドレスに身を包んだミアたち4人の色使いがキレイで素晴らしいし、 その後のパーティーでのプールにボチャンと飛び込むダンスも曲とバッチリあってましたね。
セブとミアは、ラ・ラ・ランド=夢の国の住人
ラ・ラ・ランドは夢を追っている2人の映画で、舞台もハリウッドです。ハリウッドの町並みもすごくキレイでとにかく、色彩が豊かでたまらないです。 ミアとセブが出会い、徐々に惹かれ合うパーティー後の、グリフィス・パークでLAの夜景をバックに踊るミアとセブの「ア・ラブリー・ナイト」の 夜景なんて夢をみているような景色でしたね。ポスターに起用されてるあれです。あのシーンです。 あれも、あの夜景の瞬間のシーンを撮影する為に2日間かかったらしいです。正にマジックアワー、、、。(始めにタップシューズを履き替えてたのには笑いました) グリフィス天文台のシーンと共に、まるで夢の国のおとぎ話のような演出でした。
ラ・ラ・ランドもロサンゼルスという意味と、おとぎ話の夢の国、夢ばかり見てる人という意味があるそうなんですね。 ハリウッド女優やジャズピアニストで有名になろうなんて、夢見ちゃってみたいな、、。皮肉の意味でも使われるそうです。タイトルには、そんな意味があったんですね、、。
オマージュと『ニューヨーク・ニューヨーク』とジャズ
観た後に、調べると色んな過去の名作のオマージュがあったそうで、『ロシュフォールの恋人たち』や『シェルブールの雨傘とか』、、 色彩設計や季節ごとの見出しは、両作品へのオマージュらしい。私は、どの作品も観たことがないので俄然興味が湧きました。 話の筋は、『ニューヨーク・ニューヨーク』でサックス奏者のロバート・デ・ニーロと、歌手のライザ・ミネリがビッグバンド・ジャズの楽団に入ってスターになるが、、、、。 という映画に影響を受けてるそうで、後から観てみました。かなり長い映画で、当時興行的には失敗とされているそうですが面白かったです。ロバート・デ・ニーロも超乱暴もので最悪な性格だと思いましたが、サックスを吹く姿はメチャメチャかっこ良かった。。時代は太平洋戦争終結の1945年から10年位を描いていて、 当時のジャズはビッグバンド編成から、少人数のビバップと呼ばれるアドリブで即興的な演奏が流行した時代だったそうです。
対して、『ラ・ラ・ランド』の主人公セブは、1950年以前のジャズにこだわっていて周囲からは昔の音楽で古いよ。と思われています。 『ニューヨーク・ニューヨーク』では、革新的なビバップが『ラ・ラ・ランド』では、過去のものと捉えられている。 ただ、ジャズファンから見ると、『ラ・ラ・ランド』でジョン・レジェンド演じるキースのバンドにセブが入るんですが、キースのバンドはジャズを柔軟に現代のR&Bシーンもミックスしていて、 売れているんだけど、セブとミアは本当にやりたいことと違う。本物のジャズが俺はやりたいんだ。と現代のトレンドに否定的です。1950以前のジャズこそ本物と ずっと描かれていることについて、モヤモヤする方もいらっしゃるみたいです。
”2人だけの物語”と対比
『ラ・ラ・ランド』は徹底してミアとセブの2人だけの物語です。もう本当に2人だけしか描いてないです。サブキャラ達の人物像はそれほど掘り下げられず、 2人の選択に影響も与えません。2人の世界だけを描くことで、ググッと2人に感情移入しました。 この映画の美しいのは色彩だけでなく、シーンもキレイに対比になってます。 高速道路で始まり、後半でミアは高速を途中で降りる。 ミアの仕事先のコーヒーショップに有名女優が現れて、後半ではある人物が有名女優として現れる。 セブの仕事先のジャズバーでピアノを弾いてミアと出会い、最後にセブもピアノを弾く。 と、今までそんなに色んな映画を観ていない自分にとって、分かりやすくて、とても楽しめました。映画が終わっても、映画の余韻に浸りすぎてやばかったです。
ラスト7分のエピローグの為にこの映画はある
ラストを思い出して涙。。。サントラ聞いてまた涙。。。 ラストのエピソードがほんとに泣けるし、セブの”エピローグ”。もうほんとにグサッと心に突き刺さります。観客は、5年後の冬に2人がどういう結論を出したのか分かってるんですよ。 でも、こうなれば良かった。こうであればいいのにと、自分が思った結末を”エピローグ”で、これでもかとやってくれるんですね。でも現実は違う。
それが、観客にも分かっているから、とてもとても、切ないし、セブ〜〜〜とミア〜〜〜〜ってなりました。 ”エピローグ”の演奏が終わり2人が最後に目を合わせる。けどお互い何も言わず、ミアは店を後にします。目を合わせた2人の表情がもう素晴らしすぎて。 ちょっと、うなずくんです。そのちょっとが、なんかめっちゃくちゃ好きでした。いやーまた泣けてくる。。。 丁寧に春、夏、秋と描いて、最後の、最終盤の冬のシーンに、この映画のすべての魅力を詰め込んでいると思います。 いつまでも心に残る映画でした。